山口百恵L.A.ブルー

おすすめレコード

今回は昭和歌謡の歌姫の一人、山口百恵の「L.A.ブルー」。大ヒット連発/絶好調だった彼女が三浦友和との結婚を期に引退する訳ですが、引退の約1年前に発表されたレコードになります。
彼女のファンの中でもこのレコードを選んで紹介する人は少ないと思いますが、今聴いてもとても良いレコードなのでご紹介します。

山口百恵の「L.A.ブルー」

金子雅著「祭典の日々 山口百恵論」より抜粋
「山口百恵の最高傑作アルバムとなり得た作品。<途中略>実に悔しいアルバムである。アレンジャーのバリーファスマンという男の、毒にも薬にもならない富裕のアレンジ、譜面を忠実に再現するロスのミュージシャン。怨念気迫のため百恵のヴォーカルのテンションも普通だ。楽曲はどれも佳曲であり、捨て曲がない。」
非常に的を得ていてこのアルバムレコードを聴いたときに私も同じ感想を持ちました。

山口百恵の後期のシングルヒットナンバーは、ほとんどが作詞:阿木燿子、作曲:宇崎竜童、編曲:萩田光雄で作られています。
編曲の萩田光雄氏はあまり一般的に知られていませんが、当時の昭和歌謡ヒット曲を作り上げた「魔術師」とよく言われています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%90%A9%E7%94%B0%E5%85%89%E9%9B%84

阿木/宇崎のエッジの効いた曲も、当時の歌謡曲としてヒット曲になるように編曲されています。
そういう意味で、このアルバムレコードは萩田光雄氏が全く関わっておらず演奏もLAのメンバーという事で、歌謡曲の枠及びヒット至上主義から少しだけ離れた、そして少しだけエッジの効いたサウンドにチャレンジしたアルバムだったのかもしれません。
当時の歌謡界はシングルヒットが命でアルバムをあまり重要視していない中、事務所としてはLAミュージシャンと一緒にやった程度の話題性だけ狙いだったのかも知れません。
このアルバムにはシングルヒット作が1曲も含まれていない。そして金子雅氏も書いているようにサウンドが普通のシティポップっぽいのだが、明らかに他の歌謡曲サウンドとは違うものになっているという特徴があります。
今、中古レコード業界では山下達郎/竹内まりや/吉田美奈子/松原みきなど和モノシティポップが世界中で人気だが、そこに食い込んでもよい位の内容なのです。

横須賀 恵(ヨコスカケイ:山口百恵のペンネーム)

このアルバムレコードの中で、2曲山口百恵は横須賀恵というペンネームで作詞しています。
A面5曲目 「CRY FOR ME」
B面5曲目 「DANCING IN THE RAIN」
両面共に最後の曲を担当しています。A面B面で構成を考え作られるところがアナログレコードの良さです。CDや音楽配信サブスクだと「CRY FOR ME」は途中の1曲になってしまう。
山口百恵は作詞の才能もあった。もちろん量産するのは無理だろうが情景や感情を言葉で表現する事が出来、しかも曲に載せるように文字数も合わせにいく事も出来る才能。
どちらもバラード曲であるが感情の入った百恵のヴォーカルがとても良く素晴らしい出来栄えになっています。

この1曲

このアルバムレコードの中でもう1曲紹介します。
A面4曲目 「タイトスカート」
これは作詞:阿木燿子、作曲:宇崎竜童の作品です。阿木燿子のプロフェッショナルな作詞とそれに合わせた宇崎竜童の渋めのブルース。その詩のシチュエーションの中で場末の女性シンガーのように歌う山口百恵のヴォーカルがこれまた素晴らしい。
あえてプロフェッショナルな作詞といったのは、ストレートな表現は使わず、場末のBARをすぐに想像させその中の女性シンガーの思いやつぶやきを聴く側に軽妙に感じ取らせるテクニック。やはり凄いです。
冒頭の金子雅氏の引用の通り、「楽曲はどれも佳曲であり捨て曲がない」中ですが、このタイトスカートと横須賀恵作詞の2曲をあえて紹介させていただきました。

最後にライヴ盤紹介

このアルバムレコードに収録された曲は、残念ながら1980.10.5の日本武道館でのさよならコンサートでは1曲も歌われていません。このアルバムレコードの特徴からしてしょうがないでしょうね。
しかし今日紹介した「CRY FOR ME」「DANCING IN THE RAIN」「タイトスカート」の3曲が歌われている別のライヴアルバムレコードがあります。
いずれ紹介しようと思いますので今回はジャケット写真のみお見せします。

レコードはいいよ!

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