日本人のJAZZピアニストの先駆者としてアメリカに乗り込んで活躍した秋吉敏子。1950年代後半からアルバムを出しているので半世紀以上の活躍である。
ウィキペディアを見たら2023年現在93歳だそうだ。
数ある作品の中から1976年の日本でのライヴ録音盤をご紹介します。
正確にはToshikoAkiyosi-LewTabackin Big Band名義のレコード。
秋吉敏子のレコードを最初に紹介する時にこのレコードを出すのは珍しいと思います。秋吉敏子を初めて聴いたのが横浜のJAZZ喫茶「ちぐさ」だったので、その思い出も含めて。。。
秋吉敏子
苗字の漢字表記は昔は秋吉だったのですが、最近のウィキペディア等は穐吉敏子になっているようです。ただ今回ご紹介するレコードのライナーノーツは秋吉敏子と記載されているので
今回のブログは秋吉敏子で記載します。
ピアノトリオでの演奏や旦那様のルータバキン(テナーサックス&フルート)と一緒にビッグバンドでの演奏が数多くレコード作品として残されています。
今回ご紹介するレコードはビッグバンドスタイルでの日本公演のライヴ盤です。聴きどころは秋吉敏子のピアノソロと言うよりかは曲構成の切れ味や爽快さと思います。
JAZZなのでそれぞれのパートでアドリブ入れながら自由にソロを取るのですが、その自由さときっちりテーマに戻ってくるところやテーマアンサンブルの一糸乱れぬメロディラインは本当に爽快です。
バンドリーダーとしての秋吉敏子の手腕と言えると思います。
1970年代はJAZZの世界も4ビートやスイングだけには飽きられてスタイルが変わりかける頃ですが、秋吉敏子は変わらぬスタイルの中でアグレッシブにJAZZに取り組んでいたのではないかと
今あらためてこのレコードを聴くと感じます。勝手な個人的想像ですが。。。
アルバム内容
2枚組のレコードです。私の感覚だと当時は歌謡歌手等もライブ盤を2枚組でレコードを出すことが多かったように思います。
レコード片面25分弱の録音時間になりますので2枚組で100分弱。曲間などを編集して収めるのに丁度2枚組が良かったのかも知れません。また当時はMC部分もレコードに残していたと思います。
個人的な印象はライヴレコードは録音状態が良いものは少なく、MC部分が最初はライヴにいった感じになるのかも知れないですが、レコードで音楽を聴く行為からすると後々邪魔な感じがします。
今回ご紹介のレコードは録音状態はとても良く音が良いです。ただ最初にMCとメンバー紹介が入ります。まあ冒頭だし邪魔な感じは受けません。
曲は順番も含めてきりっと引き締まった流れです。ほぼ秋吉敏子のオリジナルです。スタジオ録音のレコードと比較して聴けるのも楽しみの一つ。
またこのライブ盤でしか聞けないオリジナル曲もあり、秋吉敏子節満載で堪能出来ます。
初めて秋吉敏子を聴いてみようという方には大変おすすめです。
この1曲
2枚組ですが1曲の演奏時間が長いので、収録曲数は全部で7曲と少なめです。1曲の演奏時間が長くなるのはライヴ盤ならではの楽しみです。
この1曲は間違いなくA面1曲目の「TUNING UP」です。16分48秒の長い演奏です。先ほど書いたように最初にMCが入りビッグバンドのメンバーを全員紹介します。その後に「それでは私たちチューニングします」と言い、全員それぞれ自由に音を出します。
チューニングは音合わせの事なので本番前に終わっているのが普通です。秋吉敏子のこのセリフに観客が吹き出す声が入っています。
しかし、この本番でのチューニングは当然計算されていて、それぞれ音を出しながらだんだん音程が近くなってきて、リズムセクションが4ビートを刻んで曲になだれ込みます。
何時聴いてもゾクゾクします。
ライナーノートによると、ここで初めて公開のオリジナル曲だったらしいです。会場のお客様はこの曲のタイトルが「TUNING UP」とは知らなかったでしょう。。。
JAZZ喫茶「ちぐさ」横浜野毛
私が最初に秋吉敏子のレコードを聴いたのは、まさにこの作品「ROAD TIME」でした。
そして聴かせてもらったのは横浜野毛のJAZZ喫茶「ちぐさ」でした。
多分1980年ころだったと思います。店主のオヤジさん(吉田衛さん)に「秋吉敏子聴いたこと無いので何か聴かせてほしい」とリクエストしたところ
「秋吉敏子の声が最初に聴けるしこのA面が最高だぞ」と言いながらこのレコードをかけてくれました。
今日のブログは本当はオヤジさんの受け売りなのです。
オヤジさんは若い人にJAZZを聴かせたりミュージシャンの育成に尽力されていて、秋吉敏子、渡辺貞夫、日野皓正などがお店にいりびたってJAZZを聴いていたそうです。
私がちぐさに通っていた時は、3人ともトップミュージシャンでしたが、息子や娘を見るような感じで一緒に写っているに写真を見せてくれました。
オヤジさんは普段ちょっと怖めなのですが、私が秋吉敏子を聴きたいと言ったのでうれしそうな顔してレコードかけて写真も見せてくれました。
ネット上にあった当時のお店の写真(今はマンションが建っています)、オヤジさんの写真、そしてオヤジさんと秋吉敏子後ろにクレージーキャッツの写真です。
JAZZ喫茶は、黙ってJAZZを聴くスタイルの日本独特の文化ですが、「ちぐさ」は最初のJAZZ喫茶と言われています。
昭和8年開業。オヤジさんが亡くなった後も常連さんやボランティア、妹さんがお店を続けていましたが、土地の再開発もあり閉店。
しかし再度再建運動が地元では起きていて復活するかもしれません。
私は「ちぐさ」でオヤジさんにJAZZをたくさん聴かせてもらいました。今日ブログを書きながらオヤジさんを思い出したので追記しました。
レコードはいいよ!